快居

外掛けの効用

簾の効用は窓の外に日陰を作る。以前の日本家屋は軒が深くその先に簾をかけることによってかなり広い範囲の日陰が出来ます。そして温度差が生まれ人工的に空気の流れを作り風を起こします。感覚的に涼感を感じるだけでなく、室内に風をおくるという実質的な効用がありました。が、最近の家の造りだと南側の窓には殆ど軒が掛かって居ない為にあまり効果はありません。現在では室内への直射日光を防いでエアー・コンディショナーの効き目を上げるという方向に変っています

簾の価格の違い

簾の素材以外にも必ずしもすべてのケースに当てはまる訳ではないが基本的な部分として

これらの要素はそれぞれの簾に当てはまります。簾素材と別にこの部分が価格に反映していることが多い。逆に言えば桟木が焼き竹の2枚合わせであるなら使われている素材もなかなか上質ではないかと推測できます。(すべてがそうだとは言えませんが)

使われる素材

外掛け簾に一番用いられるものはヨシ。河原や湿原に群生しています。実はアシとヨシは同じものです。あのパスカルの「人間は考えるアシである」の「アシ」です。この言葉からもわかるように世界の至る所でごく普通にみる事のできる植物です。また弾力性があり、強い風も受け流し耐久力がある点もこのパスカルの言葉には込められています

ヨシと呼ぶようになったのは「アシ」が「悪し」に通じるからという説や簾に使えない丈の短いものを「アシ(悪し)」、使える長いものを「ヨシ(良し)」と分けたからと言う説もあります。また琵琶湖のアシを扱っている関係者は全く別の植物として区別しているとのこと。

ヨシのようなイネ科の植物の筒状になった茎を用いられることが多い。また風を受け流す耐久性は成長次第では長い茎を持つようになることも有用される利点。

外掛けの種類

天津葦

天津葦はもっぱら中国の湿地帯で育成されたものを輸入している。広大な湿地帯に葦のの大平原。この中をボートで廻って刈り取るとか。簾に加工される工場によって多少のノウハウはあるのだろうが結局手間賃との戦いである。もはや糸が緩みバラバラになるものも少なくかなりの良く出来ている。今時の簾の定番と言ったらこの天津簾と言えるだろう。質的には手慣れたものが多く、時期や地方、工場、指導した日本の関係者などによって多少のぱらつきはあるがびっくりするほど良いものも無ければそれほどひどいものも少ないようだ。

かなりの期間風雨に晒されてすっかり色が落ちてしまい寂れたものを軒にかけ放しにしている家をみる事がある。しかしそれでも本体自体はばらけたり、壊れている訳ではないので当たりを掴めば相当な耐久性はあるようだ。

袋詰めされているものは中に虫の屍骸などが入っている場合もある。封開ける時は注意した方がよい。衛生面から最近では高温の蒸気で蒸しそのまま真空パックされているものもある。割高にはなるかもしれないが気になるならこの手ものを捜してもよいかもしれない。

パーモ草簾

茎を利用している。天津葦をもう少し太目したサイズ。ストロー状でプラスティック感がある。しかし何よりこの簾のメリットは昔ながらの葦に太さや感じが近い事である。一見すると国産の葦簾に見える。ただ色が多少薄くかなり人工的な感じがするのと茎があまりにつるつるしている為に編んである糸が緩み易い。一個所でも緩むと全体にばらける場合もある。また丈も揃えにくい。質感の割に、価格は手ごろ。

蒲芯簾

薩摩蒲などが有名。蒲の茎を鮫肌で磨いて作られたものが本格的なもの。であるけれど最近見かける安いものはそのまま磨かずに編んでいるようだ。また色も薄く白っぽいものが多い。なにより茎の太さが様々で流石に一枚の簾の中では一応太さを合わせているようではある。2枚並べて懸ける場合は注意が必要。愕くほど太さの違うものがある。野卑な感じが面白い。上質なのものと廉価なものの質感はかなり大きく、また値段も相応に開いている。

鬼萩簾

本来は赤萩で作られていた赤萩簾が材料が不足→値段が上昇ということから見た目が似ている鬼萩が作られた。セイタカアワダチソウを枯れさせて着色。濃い茶色の簾。落ち着いた風情でやや枯れた感じもある。質感も趣もある。最近では対応サイズも多い。小窓やランチョンマット用に加工された小さいものもある。

竹加工簾

竹の皮を付けたまま焼いたものや竹を割ったものを燻したものなど。そのままではかび易い竹に手を加え、外掛けの使用に耐えるようにしたもの。上品に仕上がっている。加工品なので全体のひごのサイズを揃え易い。竹の皮を使ったものは最初こそ青(緑)色であるが数ヶ月で黄色くなる。新年とともに青竹の簾を掛け、また新しい年には新しい簾をかけるというのが正当な使い方だそうである。

〔快住居士〕

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