晴交雨獨 No.15 | prev | next |

焦れる

アメリカ大統領・選挙人選びはゴア候補の敗北宣言で一応の決着しました。或新聞の社説の見出しは「やれやれ、やっと終った」。すっかり焦れていました。選挙人選びのシステムの問題はさて置き、集計自体の手続きはそれぞれに意味はありましたし、お互いが納得できる方法を試していました。時間はかかりましたが、拙速だのといわれない方法で多数決の結果を補完しているわけです。フロリダで逆取材された日本人記者が深刻ぶって、ただ大変だ、大変だと言っている為、嘲笑されていました。そりゃそうです、現職の大統領は在任しているわけで緊急の救援が必要な人がいるわけでもなく、かといって事態は決して停滞しているわけでもありません。

多数決なんてほんとに簡単なシステムで誤った提案でも支持する人間が多ければ決まってしまいます。少しでもマシナものにする為には議論が必要であるし、細かい部分まで検討しなければなりません。が日本のメディアは「じっくり議論する必要がある」なんて口先(指先?)ではいっていますがその実ものすごくセッカチで拙速好きです。

例えば相撲の場合。大関が優勝するともうその時から早くも横綱昇進と言い出します。もちろん相撲は国技だし横綱といえば最高位なんだから大きなニュースには違いありません。しかし確かに扱うのは当然としてもその扱い方は拙速です。場所が始まると初日から昇進ラインだの一番一番に理事長にコメントを求めたり。少なくとも優勝が条件なのに。さらに3日目に勝って「どうですか」なんて質問しているのですが、聞かれた方だって答えようがありません。本来の相撲の面白さは追求せずにそんなことばかりに熱心です。

もうひとつスポーツに関して言えば、「引退」についても喧しい。或年齢になった選手には一つの競技の結果で「引退引退引退引退」と見出しを書きます。他に書くべきニュースは幾らでもあるのに。もっとも最近の選手のなかには見事に逆手に取った人もいましたね。思わず快哉。

で、実はこれが国際紛争の2国間協議などでも同じ対応をしています。大体蚊帳の外にいる日本がガチャガチャする必要はないし、結果を待っていれば良い。ましてやその紛争が2000年位の因縁あるものなら端がヤキモキした所で仕方ありません。ところがこれにも焦れる。互いに譲らず、会議が長引くともう居ても立ってもいられなくなります。さあ、相手の立場に立ってなんて余計なことまで言い出します。子供の喧嘩を仲裁しているんじゃないんだから。大体会議のあいだはつかの間の平和が訪れている場合もあるのです。長引く事はマイナスばかりではありません。

急病で倒れた総理大臣の後釜は臨時の総裁選を行うべきだったと僕は思います。でもあの「やれやれ、やっと終った」なんていう感じだと、多分そんな暇はなかったでしょうね。密室選びを支えているのはどうもこういう性質もあるように思うのですが。もちろんこのメディアを支えているのは日本の国民性ですけどね。

| prev | next |
cheer down